ニュースの概要
婦人公論.jpが、団地で一人暮らしをする76歳のカルメンさんの暮らしを紹介しました。年金は月に約11万円です。彼女は1年の予算を120万円と決め、その枠の中でやりくりしています。年金生活に入って9年が過ぎましたが、その間に貯金は400万円まで増えたといいます。年金額だけを見れば厳しい水準にも思えます。それでも、支出の上限を先に決めて暮らすことで、足りない状態を避けるだけでなく、蓄えまで作れたという内容です。節約を我慢の話にせず、自分で選んだ暮らし方として語っている点も特徴です。
引用元: 団地で一人暮らし・年金11万のテネキ〜・カルメン76歳「1年の予算を120万円に設定。年金生活9年間で貯金は400万円に」(婦人公論.jp)
分析・見解
年間120万円という上限が家計を守る
年金は月11万円で、年に直すと132万円ほどです。そこに予算120万円を置くと、毎年12万円前後の余白が生まれます。9年続ければ約108万円です。ただし、貯金400万円はこの差額だけでは説明できません。退職時点の蓄えや、臨時の収入があった可能性が高いでしょう。大切なのは、手元の金額を見て使うのではなく、年単位の天井を先に決めている点です。
月ごとの収支だけで管理すると、冠婚葬祭や家電の故障のような突発の出費で、すぐに赤字に見えます。年間で枠を持てば、波を一年の中でならせます。家計の世界では、これを予算の先取りと呼びます。
固定費の低さが、暮らしの余裕を生んでいる
団地は、民間の賃貸に比べて家賃が低めです。公営住宅なら所得に応じた家賃になり、都市再生機構(UR)の物件は更新料や礼金がありません。一人暮らしで住居費を抑えられれば、年金の使い道は食費、光熱費、通信費、医療費に絞られます。
総務省の家計調査では、高齢の単身無職世帯の消費支出は月に約15万円前後とされます。11万円の年金で足りるのは、住居費が低いという前提があるからです。同じ年金額でも、家賃が月6万円かかる地域では成立しません。この事例は節約術というより、住まいの選び方が家計を決めるという話として読むほうが正確です。
我慢の節約と、納得した節約は続き方が違う
この事例が興味深いのは、本人が苦しさよりも手応えを語っているように見える点です。支出を減らすだけの節約は、数か月で反動が来ます。一方、何にお金を使い、何を手放すかを自分で決めている人は、続きます。
行動経済学では、自分で選んだという感覚が満足度を高めるとされます。予算120万円は、足りない金額ではなく、自分で引いた線です。その線の内側なら、友人との食事や趣味にも罪悪感なく使えます。使わないことが目的ではなく、使い方を自分で決められることが目的になっています。
長生きの時代に、400万円は十分なのかという問い
76歳の女性の平均余命は、おおむね15年前後です。仮に90歳まで暮らすと、あと14年あります。毎年12万円の余白が続いても、さらに170万円ほど増える計算です。一方で、介護や住み替えが必要になれば、費用は一気に膨らみます。
貯金400万円は安心材料ですが、万能ではありません。医療費の自己負担には高額療養費制度という上限があり、介護にも負担を軽くする仕組みがあります。公的制度を知っているかどうかで、同じ貯金額でも安心の度合いは変わります。蓄えの額と同じくらい、制度の知識が老後を支えます。
ビジネスへの影響
高齢の単身世帯向けに、年間で使える仕組みを作る
月払いの料金や月額のサービスは、固定収入で暮らす人にとって重く感じられがちです。年間の予算で考える層には、年額で見通せる料金設計や、使わなかった分を翌年に回せる仕組みが響きます。小売や通信、保険、宅配の各社は、月額の安さより、年間でいくらかかるかを示すほうが選ばれやすくなるでしょう。
従業員の老後設計を、福利厚生で支援する
企業の人事担当者にとって、この事例は退職前の研修の題材になります。年金額、住居費、医療や介護の公的制度を一枚で見せ、いくらあれば足りるかを本人が試算できる場を作ることが有効です。資産運用の話から入る研修が多いですが、実際には支出の上限を決める習慣のほうが再現しやすい内容です。
団地や公的住宅の価値を、地域事業が再評価する
高齢化が進む団地では、見守りや買い物支援、配食のニーズが増えています。低い住居費で暮らす層は、少額でも継続して払える生活サービスに価値を見いだします。月数百円から始められる見守りや、地域の店と連携した配達は、事業として成り立つ余地があります。自治体や管理組合と組み、住民が自分で選べる形にすることが成否を分けます。
